「関西の吹奏楽部・吹奏楽団が活性化するための一助になりたい」 インタビュー:「Close-up Kansai WIND」管理人さん






2005年より運営を開始された地域密着型の関西の吹奏楽総合情報サイト「Close-up Kansai WIND」。

Close-up Kansai WINDのサイトはこちらから

Wind Band Pressも運営開始後の比較的早い段階から「Close-up Kansai WIND」と提携しています。

今回は「Close-up Kansai WIND」の中の人、管理人さんにメールインタビューをさせていただきました。


―今回はウェブサイト「Close-up Kansai WIND」について色々とお話をお伺いできればと思います。まずは「Close-up Kansai WIND」を立ち上げたきっかけをお伺いできますでしょうか。

正直に言うと、アクセス数が伸びるサイトを作って、そこで自分の楽団を宣伝して集客を伸ばしたい、というのがスタートでした(汗)

このサイトを立ち上げた2005年頃は、ネットが盛んになった頃ですよね。
個人でホームページを持っている人も多かったと思います。
そんな中、地域密着型の情報サイトが今よりもたくさんあったんですよね。

印象に残っているのは、コンクールの情報が充実している埼玉のサイト、地域の吹奏楽イベント情報が豊富な北近畿のサイト。
それからジャンルは異なりますが、広島県北部で大変人気のある神楽にスポットをあてた「KAGURAの杜」という閲覧者参加型のサイト(今は少しスタンスが変わっています)。

それらのサイトの特徴を組み合わせて、「コンクール情報の速報とアーカイブ」「地域密着」「閲覧者参加型」というスタンスを併せ持ったサイトを作れたら、アクセスも伸びるかなと思ったのがきっかけですね。

その一方で、ほしい情報にたどり着くまでに、なぜこんなにイライラしなければならないんだろう、と(苦笑)。

吹奏楽連盟の公式サイトがほとんど確立されていない時代でしたから仕方がないのかもしれませんが、だからこそ「ここを見れば、確かな情報が手に入る」という状況を作り出したいと思っていました。

偽情報がなく誹謗中傷のないクリーンなサイトだという世間の信頼を勝ち取れれば、閲覧も必ず伸びるだろうという狙いですね。

そういった意味で、サイトの構築を始めたときはある種の使命感を感じながら作成し、2005年のコンクール地区大会開始直前になんとかスタートさせました。

―「このサイトについての詳細」を見ると「このサイトは関西で吹奏楽を楽しむ人と、楽しみたい人を繋ぐページです。掲載情報は、みなさんからの情報提供により成り立っています。」とあり、基本的には「関西のみんなで作るサイト」という印象を受けますが、投稿の受付以外にはどのような作業があるのでしょうか。

先ほど少し触れましたが、「コンクール情報の速報とアーカイブ」が管理人として一番大変な作業です。

大会初日にパンフレットを入手してから大急ぎで情報を入力します。これがなかなか大変です。
最終的にアーカイブされていくものなので、誤植のチェックや、知らない曲の情報の真意を確かめたり・・・。

一方で速報は、「確かな速報」を掲載するために、最低限まずは大阪が「網羅されている」ことが大事だと考えていますが、府大会予選が同時開催の日もあるので、そういう日は苦労します。

本当は関西全域でやりたかったのですが、手始めに取り掛かった大阪でかなり苦労しているうちに、他府県のサイトはアーカイブ化・速報化が進んだので、結果として現在は手が届く範囲の大阪大会と関西大会だけに絞っています。

―その他、運営方針などございましたらお伺いできますでしょうか。

さきほど挙げたものも含めて3つのスタンスをご紹介させていただきます。

1.選曲素材としてのアーカイブ
たくさんやっている曲を選びたい、演奏頻度が少ない曲を選びたい、良い結果が出る曲を選びたい・・・。
何が正しいかはともかくとしても、他団体の選曲情報を知りたいニーズってあると思うんです。
全国大会や支部大会の情報は既にあちこちにありますが、予選レベルの情報を求める人は少なくないと感じているからこそ、そんな情報サイトがあるといいんだろうなと思っていました。

実際に私も、所属する楽団の選曲に関わっていますので、集客要素としての選曲=知名度が高い曲が何なのかが気になっていました。知名度のある曲、すなわち頻繁に演奏されている曲が何なのかを探るために、過去に私はコンクールのパンフレットを熟読して、曲の知名度を調べたこともありましたから。

それらがアーカイブされ、検索できるシステムがほしいというニーズは・・・私が一番持っていたかもしれませんね(笑)
理想は、関東のパンフレットのように楽譜の出版元等の情報まで掲載されているといいんでしょうけど、さすがにそこまでは余裕がないのが残念です。

過去の傾向を調べるもよし、選曲のアシスタントにするもよし、自分たちの頑張った記録をみて当時を思い返すもよし。

このサイトに訪れているであろう、吹奏楽を一生懸命頑張りたい人を応援し、頑張った人たちをねぎらうサイトにしたいと考えています。

2.地域情報の掲載
吹奏楽部の活動って、コンクールや定期演奏会だけじゃないですよね。
学校行事はもちろん、地域からの依頼イベントなどもあります。

その一方で、多くの団体が定期演奏会の集客に苦労していると思うんですが、定期演奏会だけ告知・アピールしても仕方がないと思うんです。

本当は、地域の依頼イベントや学校行事などでどれだけファンを獲得するかが重要だと考えています。
そのファンを獲得するためには、それらのイベントにたくさん人が集まっていることも大事な要素だと思っているんですよね。

自分の居る場所の近くで演奏するのを知ることができれば、興味本位で演奏を聴きに行くこともできますよね。

そんな地域密着の情報が集まるサイトにしたいと思っています。

3.閲覧者参加型のサイト
自分たちのホームページなどで発信するのもよいのですが、特にホームページはその団体に対して興味がある人が訪れて情報収集する場ですよね。

追っかけまでいかなくても「このバンド、なんとなく良いな・・・」と思っている人にアピールするには、ポータルサイトの活用が良いんじゃないかと思っています。
今の時代はFacebookやtwitterもありますが、流れてくるかどうかは運しだいですし。

サイトやSNSはうまく使えないけど、告知をしたいと思っている団体も少なくない。
加えて、演奏者はお客さんに聴いてほしいと思っていますし、お客さんの反応を知りたい。

一方で、お客さんは「なんとなく好きだな」というバンドの情報が簡単に手に入る場所を探している。
あるいは、「あのバンド好感もってたな」というバンドの演奏を簡単に見つけられる場を探している。
そして、演奏に対して文章でエールを送りたいお客さんもきっといるはず。

それらの仲介役のようなポジションになることができれば、「吹奏楽をやっててよかった」の手助けができるんじゃないか、というのも運営方針の一つです。

―2016年にはサイト開設から10周年を迎えられたわけですが、これまでにサイトを運営していて「最も嬉しかったこと」また「最も苦労したこと」はなんでしょう。

嬉しかったことは、たくさんの方がサイトを閲覧してくださっていることですね。
コンクール会場で多くの方がサイトを見てくださっているのを、口コミでも聞きますし私自身も目にもします。
ただ、本音は形に残るパンフレットを購入していただきたいんですけどね(汗)。

それから、このサイトのコンセプトに共感して、コンサートレポートを送ってくださる方々がいてくださることですね。
その方々のコメントを読んでいると、私もそのバンドの演奏を聴いてみたくなります。
書いてもらったバンドのメンバーも、きっと「私たち頑張ってよかったね!」と笑顔になってくれているでしょうから。

苦労したことは、スタート時点で他サイトとの差異をつけるために作成した過去のアーカイブですね。

10年分のテキストを打ち込むのも当然大変でしたが、それ以上に苦労したのが過去の結果。いろんな友人を頼ってかき集めましたが、最終的に集まらなかった情報は、朝日新聞の新聞記事検索の有料サービスで取り寄せました(汗)。

あと、たまに審査・制度に対する誹謗中傷が投稿されるのは残念です。

「なんであの演奏が銀賞なの?」という想いは、審査員批判ではなく出演者へのエールに昇華したらいいと思うんですけどね。

「審査員は銀って言ってるかもしらんけど、そんなんどうでもええねん!めっちゃええ演奏やったで!」と。

関西の気質なら、きっとそれができると思っているんですけどね。

―比較的自由度も高いサイトかと思いますが、それゆえに気を付けなければいけないこともあると思います。どのようなことに気を付けていらっしゃいますか。

一番はオフィシャル性ですね。

本当は、最初に述べたように「サイトの閲覧数が伸びたら自分の楽団の紹介をしよう」と思っていたんですが、オフィシャル性を重視して自粛しました。

あとは、投稿記事の削除は非常に気を使います。
正直マナー違反、サイトのルール違反は削除対象ですし削除したいんですが、逆に削除することで「あおる」ことにもなります。
その辺の管理は難しいですね。

―関西だけでなく全国のアマチュア吹奏楽団の多くが自分たちのサイトを持っていると思うのですが、仕事をしている人が管理人も兼ねている場合、なかなか手が回らないことも多々あるかと思います。効率の良い更新の仕方など、「Close-up Kansai WIND」なりのサイト運営のコツがあれば、教えてください。

キラーコンテンツの明確化と、その準備を怠らないことですかね。

それぞれの楽団が情報発信するための手段として、サイトやSNSがありますが、その担当者が継続的に活動できなくなる時があるのが一番難しいところだと思います。

正直、このサイトも定期的に閲覧してもらいたいとは思いますが、そのために必要な魅力のあるコンテンツを定期的に更新する余裕がないんですよね。

そういう意味では、Wind Band Pressさんの記事を自動掲載させていただいているのは大変ありがたいです。
ふとのぞいた際に、面白そうな記事が載っている、というのがリピート率のアップにつながりますからね。

話を戻しますと、更新頻度をあげられないのならば、こだわりの内容で勝負するのがいいんじゃないかと思います。
量より質とでも言いましょうか。
質というと難しいですが、ターゲットが誰で、その人がどんな情報を欲しがっているのかを考えてみればヒントはあると思いますね。

―最後になりますが、今後の展開について、展望などお聞かせください。

早くスマホ対応にしたいです(笑)
ただ、20年分のデータを移行するのはちょっと片手間ではできなくて・・・すいません(汗)。

真面目な話をすると、関西の吹奏楽部・吹奏楽団が活性化するための一助になりたいですね。

具体的には、「一生懸命頑張ったことが報われてほしい」という思いで作っているサイトなので、地域密着で温かいサイトにしたいなと思っています。

一般の方が、地域のイベントの出演情報をこのサイトで見つけて、このサイトで「あの演奏良かったよ」と伝えられるようなサイトにできればと思っています。

ですがその一方で、今の吹奏楽界は正直お客さんの想いに寄り添いきれてないとも思うんです。
演奏したい・楽器吹きたいという想いで吹奏楽を楽しみ、頑張っていることは素晴らしいことだと思いますが、アマチュアだから客無視でいい、という潜在意識が散見されることに違和感があるのです。
演奏後に、愛想拍手しかしないお客さんもいるとは思いますが、何人かは手が折れそうな勢いで拍手してくださっている人がいるんです。
そこを無視しちゃダメやで、という想いが強いからこそ、それらが伝わる一助としてこのサイトがありたいという想いはありますね。

演奏の感想を伝えたくても伝える場がない人たちのよりどころになり、こういった書き込みが増えることで、お客さんの反応が気になる人が増えていけばと思います。
そこから「本気の拍手をいただけること」の尊さに気づくきっかけの一助になりたいと考えています。

「吹奏楽やっててよかった」のために、これからも頑張ります。


インタビュー・文:梅本周平(Wind Band Press)


まとめ:

いかがでしたでしょうか。

情報サイトの管理人が情報サイトの管理人にインタビューをするという不思議な構図でしたが、それぞれ何かしら使命感ってのはありますよね。
じゃないとやってられない、という側面もあるとは思いますが・・・

いつか色々なサイトの管理人さんと座談会でもやってみたいですね。(どこで?)




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